「大掃除しようと思っても、なかなか断捨離が進まない…」
このような経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
自分の所有物を手放すことに抵抗を感じる心理現象を「保有効果」と呼びます。
「授かり効果」とも呼ばれているようです。
有名な心理現象なので、ご存知の方も多いかもしれません。
保有効果が起きる原因の一つとして、「現状維持バイアス」と呼ばれる心理現象が挙げられます。
現状維持バイアスとは、「現状を維持しようとする心理現象」のことです。
保有効果と現状維持バイアスがどのように関わっているのか、本記事で詳しくご紹介します。
この記事で分かること
- 保有効果とは何か?
- 保有効果が起きる原因
- 保有効果を活用したマーケティング事例
保有効果とは「自分の所有物を手放すことに抵抗を感じる心理現象」

冒頭でもお伝えしましたが、保有効果とは「自分の所有物を手放すことに抵抗を感じる心理現象」のことです。
人は、自分の所有物の価値を高く見積もってしまいます。
あなたも部屋にある物がなかなか捨てられない経験はあると思います。
「いつか使うかもしれないから」と言って、部屋が物で溢れかえってしまった経験はありませんか?
物を捨てられないのは、保有効果が働いているからなんです。
保有効果は、2017年にノーベル経済学賞を受賞した「リチャード・セイラー氏」が提唱しました。
リチャード・セイラー氏は「行動経済学の第一人者」です。
著書が多くあり、中でも『実践 行動経済学』は有名ですので、よかったら読んでみてください。
保有効果は日常で起きている
保有効果は日常の至るところで起きています。
先ほどご紹介した断捨離の例もそうですし、恋愛でも保有効果は起きます。
例えば、今の彼氏・彼女に魅力を感じなくなったのに別れられないのも保有効果のせいです。
今までの思い出を振り返り、彼氏・彼女の価値を高く感じてしまいます。
仕事でも保有効果は起きます。
自分よりも仕事のデキる人が入社し、役職を取られてしまうとき。
おそらく、ほとんど人は役職を手放すのに抵抗を感じるのではないでしょうか?
自分が役職を降りた方が会社は成長すると自覚していても、手放すことに抵抗を感じると思います。
保有効果を証明したマグカップの実験
保有効果を証明した面白い実験があります。
行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が行った実験です。
【実験内容】
まず被験者の学生をA、Bの2グループに分け、Aグループの学生には大学のロゴ入りマグカップを渡します。
その後A、Bのグループに以下の質問をします。
- Aグループへの質問:いくらなら、Bグループにマグカップを売るか?
- Bグループへの質問:いくらなら、Aグループからマグカップを買うか?
【結果】
- Aグループ:約700円ならBグループに売ってもいい
- Bグループ:約300円ならAグループから買ってもいい
実験結果から、人は手に入れた物の価値を手に入れていない状態よりも高く感じてしまうことが分かりますね。
保有効果が起きる原因は、現状維持バイアスと損失回避の法則

保有効果が起きる原因は、主に「現状維持バイアス」と「損失回避の法則」の2つです。
詳しくご紹介します。
現状維持バイアスとは
現状維持バイアスとは、「変化を恐れて、現状を維持したくなる心理現象」です。
現状維持バイアスが起きてしまう理由は、狩猟採集時代にあります。
狩猟採集時代の民族は、少しの行動が命取りになるくらい危険な暮らしをしていました。
猛獣に襲われるかもしれない、毒性のあるキノコを食べるかもしれないなど。
我々人間は、子孫を残さねばなりません。
そのため狩猟採集時代の民族は、行動を必要最低限のみにして、それ以外は安全な同じ場所に定住するようになりました。
これが我々人間に現状維持バイアスが備わっている理由だとされています。
現状維持バイアスが起きるため、保有効果も強くなります。
「現状を維持したい」となり、所有物を手放すことに抵抗を感じるのです。
損失回避の法則とは
損失回避の法則とは、「人は得をすることより、損失を避ける心理現象」です。
プロスペクト理論とも呼ばれています。
「得するときの喜びよりも、損失したときの痛みの方が2倍以上強い」と言われています。
損失回避の法則が働くことで、保有効果も強くなります。
先ほどのマグカップの実験の例だと、Aグループはマグカップを手に入れたときの喜びよりも、失うときの痛みの方が強く感じたため、Bグループよりも高い値段をつけたのでしょう。
損失回避の法則も保有効果と関係のある心理現象なのです。
保有効果のマーケティング活用方法

保有効果はマーケティングに活用できます。
よくあるのが「〇〇日間お試しキャンペーン」です。
一度商品を所有してもらうことで保有効果が働き、継続してもらいやすくなります。
通販番組やNetflixなどのVODでよく使われている方法ですね。
または「ご満足いただけなければ全額返金サービス」も保有効果を活用しています。
「全額返金」を打ち出すことで購入ハードルを下げて、とりあえず一度商品を購入してもらうことが目的です。
商品を購入してもらえれば保有効果が働くため、返金のお願いをする人は少ないと思います。
もしあなたが自社のマーケティング担当者なら、保有効果を活用できないかを考えてみてはいかがでしょうか?
まとめ
- 保有効果とは「自分の所有物の価値を高く見積もり、手放すことに抵抗を感じる心理現象」
- 保有効果が起きる主な原因は「現状維持バイアス」と「損失回避の法則」
- 現状維持バイアスとは「変化を恐れて、現状を維持したくなる心理現象」
- 損失回避の法則とは「人は得をすることより、損失を避ける心理現象」

保有効果に陥り続けると、正しい判断を下せなくなります。
「手放すことに抵抗を感じている」と思ったら、保有効果のせいだと冷静になって、客観的に判断することをオススメします!
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